映画化決定記念小話。弁護士と高杉(原作設定)。
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「新訳紅桜篇?」
坂田弁護士は高杉の台詞を繰り返して目を瞬かせた。
「そう。そういう映画だ」
「あなたも出演するんですか」
「そのつもりだ。久々のでかい仕事だからなァ」
これでも楽しみにしているんだぜと高杉が告げると、
ソファに腰掛けている弁護士は、狐に化かされたような顔をする。
これから忙しくなるから暫く会えねぇかもな、と告げた時も同じ顔をした。
(なぜですかと尋ねられ、映画撮影だと答えて今に至るわけだが)
高杉はその驚きの表情が、彼のもつ表情の中で特に好きだと思う。
表裏がない顔だ。そこには俺達が好む計算はなく、打算もない。
「へえ…私は出ないんですか?」
「出ないんじゃねーの?」
「それは残念です。でも、楽しみですね」
平静を取り戻したらしい彼は、そう言って穏やかに笑う。
高杉としては、会えないなんて嫌だとかなんとか駄々を捏ねられる可能性を
危惧していたので、それが杞憂になった事が嬉しくもあり、少し寂しくもあった。
とても微妙な感情だ。これは恋ではない。
「お前、映画なんか見るのかよ?」
「あなたが出るなら何度でも見ますよ。新訳紅桜篇…ですね」
高杉が教えたタイトルを、坂田は何度も口にする。
「新約聖書みたいなものでしょうか」
「しんやくの字が違ぇんじゃねーか」
「……神様があなたに少しでも、優しくなれば良い」
応援していますよ、と笑うその顔は、高杉の好むものではない。
彼の笑顔には優しさの他に不純なものも混じっていて、だから好きになれなかった。
高杉はまた坂田を驚かせてやりたいと思う。そうして透き通った表情が見たい。
映画館で見られるだろうか。俺の演技で驚かせてやれたら良い。
(嗚呼、でもそれはつまり)(俺がお前の隣で映画を観なくちゃならないってことだ)
それはあまりにも滑稽な光景で、でもあまり悪くない提案だと思えた。
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きっと彼に提案すれば、今日一番に驚いた顔を見せてくれるだろう。
高杉は銀さんの澄ました顔より、驚いたり焦ったりする表情の方が好きで、
その感情の揺れを自分がもたらしているという事に快感を見い出すんだろうなと
私は思うわけです。そんな高杉が俺は好きだ。って銀さんも言ってた。
というわけで映画化記念に映画に出ない弁護士を書いてしまうくらい、
最近は弁護士のことを考える日々が続いています。
……「いつものことだろ」という声がどこからともなく聞こえてくる気が
しないでもないですが、べっ別に否定出来ないわけじゃないんだからねっ!
そういえば弁護士を愛する皆様ならとうにご存知と思われますが
来年春コミでは弁護士プチ…あっ違う、銀土眼鏡プチが開催されますね。
銀土という制約がなければものすごい勢いで参加したところです。
これは弁護士狩り放題と解釈しても宜しいんでしょうか。
銀八だって眼鏡ですけどあっちはほら、普段から供給がありますから、
ここはどうかひとつ弁護士を私に、べ、弁護士、弁護士を…!!!(落ち着け)
……まあ、叶うなら銀高で読みたいんですけどね☆よろしくお願いします☆