戦国BASRA(佐幸)
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その小僧は邪魔だと追い払う兵士の足元でうろちょろと走り回り、
何を言っても首を傾げるばかりだった。
周りが辟易としたところで真田幸村が現れ、彼は少年の大きな瞳に負けず劣らず目を丸くする。
「む!誰が連れて来たのだ?」
「いや、それが急に此処へ…近辺の村の者だと思うのですが」
「某は真田幸村。此処は間もなく戦場になる」幸村が声をかける。
「危険でござる、離れられよ」
小僧はその凛とした声を聞き、初めて口を開いた。
「いくさばとは?」
「えっ」
いくさばとはなにか、と子供は尋ねる。
子供の言葉で、なんと表現すれば伝わるのだろう。
幸村が考えあぐねていると木の上から呑気な笑い声が響いた。
「旦那はつくづく言葉遊びが下手っぴだねえ。子供相手なんだから難しいことないよ」
ふわっと葉が舞うと、次の瞬間には目の前に猿飛佐助の姿が現れる。
もう見慣れたものだが、忍を初めて見るであろう少年は目が飛び出るほど驚いているようだった。
新鮮な反応に少し嬉しくなる。
「では何と申す!」
「喧嘩だよ、大人が大勢で喧嘩するんだ。巻き込まれると怪我をする。だからお母さんの元へお帰り」
「いくさばは何色ですか?」
「はあ?」
佐助が頓狂な声を出す。
「……」
―――赤だ。
幸村は思ったけれど、声に出さなかったし、佐助もまた黙ったままだった。
何も答えないまま少年の背を押し、早く帰るんだと急かした。
姿が見えなくなってから、振り返って佐助が笑う。
これから子供の相手はお前に任せることにしよう、と言えば、いつもアンタの世話をしているから簡単だなんて言う。
「そうだな、佐助には世話をかける!」
「あれ、冗談のつもりだったんだけどなあ」
佐助の笑顔や言葉は、どれもこれもが柔らかくて、赤くない。
戦場の色ではないから、きっと忍びの色なのだろう。
「それにしも子供ってのは厄介だよ、突拍子の無い質問で大人を困らせるんだから」
「戦場の色でござるか?」
「そう…旦那は何か答えたそうに見えたけど」
「ふむ、」
隠したはずの言葉を見破られていることに、いちいち驚いたりはしない。
佐助はいつもそうだった。言わない気持ちも、見せない態度も、いつの間にか気付いていて、知っている。それが二人にとってのごく自然な関係だった。
「某には真っ赤に見える…炎と、血の色だろうか」
「それは……そうかもね。旦那は強いから」
旦那の周りは血に染まっているよ、と。
「佐助には何色に見えている?」
「難しいこと聞くじゃない。旦那も、俺達も敵味方も、何種類もの色が混ざってる。難しいな…難しいよ」
佐助。
佐助は、何色でも似合うだろうと思った。
さすがは忍だ。全ての色に染まってみせる。白いわけでも、透明なわけでもないのに。
(……影は黒い)
佐助の影を踏む。黒い影。幸村はそう思った。
「これが影踏み鬼だったなら、佐助の負けだ」
「懐かしいねえ、それ」
***
PC内の大掃除ついでに発掘されたので。どこかで出したかな…????
というわけで、サイトの更新全然追いついてなくてすみません!冬コミでした!帰宅しました!
もう銀魂の展開のあまりのあまりさに飲み明かすしかない具合で、
6月の銀高プチは逆に何書けば良いのかわかりません!!
個人誌の内容はともかく、今までの寄稿の再録は出したいと考えているので、よしなに!
まあ、まだまだ先ですけど…きっとあっという間にやってくる(虚無)
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